20131022

羊飼いの少女






































遠く丘の上の空との境目、一途に草を食む羊たちが視界に入る











「こんにちは。こんなところで何をしているんだい、、、?」





「朝からずっと外で過ごしているんだよ」


「もう日が傾いてきたから、お家に帰るところなの」





「君たちはどこの住んでいるの、、?」





「あっち」




「どこ?」





「もっとずーっと向こうの方」





「それにしてもここは、ずいぶんと景色のいいところだね」





「もちろん、ここは世界で一番美しいところだから」






「日本人に会うことはある、、?」





「日本?どこにあるの?」





「ここからは地球の反対側、美しい島なんだ」





「この島と一緒だね」





「そうだ、折り紙って知ってる、、?」










太陽の島"Isla del Sol"


青く澄んだ母なるラゴに浮かぶ島


音の無い砂浜に、穏やかで滑らかな波が打ち寄せる


子豚や子やぎがやさしく草を食む光景を


荒野に立つもの言わぬ野犬や羊の群れを


もう会うことはないだろう人たちのことを


もう訪れることはないかもしれない美しい景色を





秋の夜長にふと思い出す





そういう幾多の景色を通り過ぎ、心の風景となっていること

描いてきた軌跡が、今につながっていること







星の巡礼者達は、今日も荒野を辿り、道を拓く








手を振りながら、丘の向こう側へと少女たちは消えていった









「 世界全体が幸せにならないうちは、個人の幸福はありえない 」





なんて、宮沢賢治のように純粋な精神は、もはや持ち得ない僕だけど


この子たちが今日も幸せであるのなら、

世の中にはまだ希望が灯っていると言えるんじゃないか




20131017

嵐の前の猫








台風が足早に過ぎ去りました。

空気に薫る秋の色が、また一段とこくなってきたように思えます。

日が落ちるのもずいぶんと早くなってきました。






昨晩より、家族、友達、元上司、教え子たちから、メールが送られてきました。

安否を気遣ってのことです。


今のところ、カーブミラーが折れてたり、飛来物が道を塞いでいたりするぐらいで、

ケガや事故などの情報が入ってきてないです。

でも、港や崖の方はきっと大きな被害があるのかもしれない。

学校は臨時休業日。

明日元気な顔を見られたら安心するのかもしれない。



と、いうわけで、

無事です。ただ、こういう連絡はあたたかい。






この島は地形的に超水はけが良いので、大島のような被害には至りませんでした。

ただ、昨夜は本当に家が吹き飛ばされるんじゃないかと思うほどの

強風が吹き荒れ、内地で味わう台風とはちがう、

育ち盛りの台風の勢いを、オールナイトで体感することができました。



島の子は言います。ニュース番組の台風中継で、

「すごい風です、、!」と言ってるのを聞くと腹立つと、、

あの程度の雨風はこの島では、デフォルトです。



そんな島で味わう「何年かに一度」の台風!!

港の様子も半端じゃなかったです。。




旧堤も新堤も荒波にもまれまくっています。

ちなみにこの動画(港のライブ映像)は、青ヶ島村のホームページから見られます。

テトラポットが打ち上げられたり、坂の上の待合所が波にやられたりしたそうです。



兄からのメールにも綴られていたように、

海の真ん中に立つ島なんだなぁと、実感させられる瞬間です。










石垣島に滞在中に、台風に出くわしたことがあります。

育ち盛りの台風の勢い。北上せずに居座る感じ。空を飛べる(飛ばされる)感じ。


ドミトリーから外に出る事もできず

亀田のカレーせんべいで飢えをしのぎ、埋没していた3日間。



そして、その後の青空。

それまでの鬱々としていた気分がそう見せたのか、

それとも嵐が、世の中の諸々をきれいに吹き飛ばしたのか、

強烈な青が、鮮やかに心に残っています。



その日の朝一番で、最南端の波照間島に行き、見た空と宙。


嵐を抜けた瞬間には、きっと鮮やかな景色が待っている。




明日はいい夕焼けと、星空が拝めそうです。





そうそう。今朝平然と鳴いていた鳥たちは、どこへ避難していたのでしょう、?

そしてあの猫たちも。





ちょっとそわそわしていた嵐の前の猫たち。

青い空の下、穏やかな午睡を夢見て。








追加情報です。


外輪山の内側、丸山の麓にある塩工場の屋根が一部吹き飛んだそうです。

さらに、東屋の屋根が倒壊しひんぎゃ(地熱)の蒸し器が使えなくなっています。

キャンプ場の倒木もひどいようです。

外壁に守られているはずの池の沢地区ですが、
やはりそれだけの勢いの台風だったということでしょう。


人的な被害が出ていないのが何よりです。

島の居酒屋で村長さんと話す機会がありましたが、

「こういう台風の時は絶対に島にいるようにしている」と、頼もしい言葉です。

そういえば、台風の前に学校にも声をかけに来ていました。

さすが、青ヶ島の自然の畏さを知る先達です。



伊豆大島での災害は決して他人事ではないです。

一日も早い復旧と、被害にあわれた方々の心身の回復を切に祈ります。


< 2013/10/20 18:20 追記 >

















20131003

季節のバトン












台風一過で、美しい夕暮れでした。


内地は真夏の暑さ、なんてニュースで聞きましたが、こちらはすっかり秋の空。


日が落ちるのが、日に日に早くなってくるのが実感されます。





全てが穏やかに染まっていく、斜陽の季節です。





また新しい台風が近づいていますが、秋の陽がさらさらと注ぐ一日でした。


部屋の中では、リンリン虫(と言うらしい)が、鳴いています。


ハサミムシのような趣ですが、これが非常に美しい音色を奏でます。


虫の鳴き声に秋の風情を感じるは、実に日本的な情緒の現れです。







「 人間が人間である中心にあるものは、

科学性でなければ、論理性でもなく、理性でもない、

情緒である 」




数学者の岡潔さんの言葉です。









「 野に咲く一輪のすみれを、美しいと思う心 」







彼の説く「情緒」を一言で表す有名な言葉。




「 人と人との間に情が通じ、人と自然の間にもよく情が通じる 」

これが日本人なのだとか。



自然が豊か(=人の住んでいる場所が少ない)だと、

自然の小さな変化にも、よく気付くようになります。




少し前に、うす桃色の水仙ぽい花が咲いていた場所に、

今度は白い小振りな花が咲き始めています。

季節の移ろいと共に、次々と新しい種類の花が咲いていくことに気付きます。

季節のバトンをリレーしているようです。

これで一年間観察したら、カレンダーになるんじゃないか。



聞く話によると、はっきりとした紅葉はないそうです、が、


ゆっくり、ゆっくりと、深まっていく秋をたのしみたいと思います。





あなたの住む町には、どんな秋が訪れていますか、、?



20131001

海を越えて届く手紙










この島で暮らしていて、特に不便を感じることはないけど、


会いたいときに、会いたい人たちに会えないことは、


そういえば忘れていた、離島というキョリを感じさせてくれる。








でも、内地にいるときは、いつでも会えたのに、ついつい疎遠になっていたな。


祈るや信じるではなく、つながっていけるように。


元教え子たちからの手紙を読んで、心が動く。




想いを届けてくれて、ありがとう。


本当にありがとう。


今を生きている様子が伝わってくるのが、一番嬉しいです。





20130930

島のサイズと彼岸花













トラックの荷台に揺られていると、夕暮れの海に虹が架かっていた。











というよりは、海に刺さっていた。と表現した方が正確だろうか。

海面に突き刺さるように垂直に伸びて、やがてゆるやかなカーブを描く。

この島では、自然界のあらゆるものが、自分の偏見を超えていくらしい。

カメラのシャッターを切る間もない。心に焼き付ける。




島内すべてのカーブミラーと、トンネル内の反射板の清掃。

皆で手分けして、1時間足らずで終わってしまう。

段取りの良さを讃えるべきか、それとも島のサイズに驚くべきか。





昼間に、フットサルの大会があった。

秋晴れの空の下、芝生の上でボールを追いかける。

プレーの一つ一つに歓声があがり、老若男女の笑顔がこぼれる。



そういえばこの光景は、見覚えがある。



協力隊で活動していた、サン・ファンに似ている。


サッカーの試合が始まると、どこからともなくコリセオ(競技場)に集う村人たち。

さほどの技術も戦術も持ち合わせてはいないが、観客の視線に因って

真剣勝負に拍車がかかる。アピールだってプロ並みだ。

削り合うようにして戦う。合間には子どもたちとボールを追いかける。



ボールが1個あれば成立してしまうシンプルさ。そして、熱狂。

娯楽が少ない、ということもできるが、単純に好きなんだろう。

文化としてのフットボール。小難しい解説はいらない。

同じ空間を愉しむだけ。これはまちがいない。豊かだ。



この島にとって、サッカーとは、フットサルとは、スポーツとは

そういった意味合いのものなのだろう。

まちがいない。豊かな時間が流れている。





今日もいい笑顔にたくさん出会ったな。

スポーツで人は一つになれるのだな。

サッカーやっててほめられたことなんてないけど、


やってて良かった。


個人的には、英語がペラペラよりも、世界で通用するステータスだと思っている。



「日本人なのにサッカーうめぇ」



これ最高のほめ言葉だ。


もっと愉しみたい。走れなくなったってボールを追いかけていきたい。


そう。中学3年生の引退試合だったそうだ。

彼らは来年の半年後の3月、島から旅立つ。15の春。






9月も終わりに差し掛かり、いくつかの台風が通り過ぎると、

島には乾いた秋の風が吹き始めた。

路傍には彼岸花が鮮やかな赤を散らし、秋の始まりを告げている。




愛おしい 島のサイズと 彼岸花





そうだ、春の話も、夏の話も、東京の話も、届いた手紙の話もしていなかった。

秋の夜長に、心の井戸を掘り下げてみようか。



空が澄み始めると、星空が一段と輝き始めた。