20130930

島のサイズと彼岸花













トラックの荷台に揺られていると、夕暮れの海に虹が架かっていた。











というよりは、海に刺さっていた。と表現した方が正確だろうか。

海面に突き刺さるように垂直に伸びて、やがてゆるやかなカーブを描く。

この島では、自然界のあらゆるものが、自分の偏見を超えていくらしい。

カメラのシャッターを切る間もない。心に焼き付ける。




島内すべてのカーブミラーと、トンネル内の反射板の清掃。

皆で手分けして、1時間足らずで終わってしまう。

段取りの良さを讃えるべきか、それとも島のサイズに驚くべきか。





昼間に、フットサルの大会があった。

秋晴れの空の下、芝生の上でボールを追いかける。

プレーの一つ一つに歓声があがり、老若男女の笑顔がこぼれる。



そういえばこの光景は、見覚えがある。



協力隊で活動していた、サン・ファンに似ている。


サッカーの試合が始まると、どこからともなくコリセオ(競技場)に集う村人たち。

さほどの技術も戦術も持ち合わせてはいないが、観客の視線に因って

真剣勝負に拍車がかかる。アピールだってプロ並みだ。

削り合うようにして戦う。合間には子どもたちとボールを追いかける。



ボールが1個あれば成立してしまうシンプルさ。そして、熱狂。

娯楽が少ない、ということもできるが、単純に好きなんだろう。

文化としてのフットボール。小難しい解説はいらない。

同じ空間を愉しむだけ。これはまちがいない。豊かだ。



この島にとって、サッカーとは、フットサルとは、スポーツとは

そういった意味合いのものなのだろう。

まちがいない。豊かな時間が流れている。





今日もいい笑顔にたくさん出会ったな。

スポーツで人は一つになれるのだな。

サッカーやっててほめられたことなんてないけど、


やってて良かった。


個人的には、英語がペラペラよりも、世界で通用するステータスだと思っている。



「日本人なのにサッカーうめぇ」



これ最高のほめ言葉だ。


もっと愉しみたい。走れなくなったってボールを追いかけていきたい。


そう。中学3年生の引退試合だったそうだ。

彼らは来年の半年後の3月、島から旅立つ。15の春。






9月も終わりに差し掛かり、いくつかの台風が通り過ぎると、

島には乾いた秋の風が吹き始めた。

路傍には彼岸花が鮮やかな赤を散らし、秋の始まりを告げている。




愛おしい 島のサイズと 彼岸花





そうだ、春の話も、夏の話も、東京の話も、届いた手紙の話もしていなかった。

秋の夜長に、心の井戸を掘り下げてみようか。



空が澄み始めると、星空が一段と輝き始めた。