20130419

34歳別れの手紙


元4年4組、そして出会ってきた全ての子ども達へ 〜離任式に寄せて〜




空は今日も青いですか、、、?


目を閉じると、風の音は聞こえますか、、、?

新しい教室の窓からは、どんな景色が見えますか、、、?

どんな花が咲いていて、どんな季節が訪れていますか、、、?

学校には、今も変わらず子ども達の明るい声が響いていますか、、、?



いつもにぎやかだった学校。

いつもたくさんの笑顔があふれていた学校が、とてもなつかしいです。


校庭の桜はとっくに散ってしまったのでしょうね。青々とした新緑がまぶしい季節です。




給食で片付けていたスプーンを、きれいに揃えた時、

黒板に書いた字がやっぱり曲がってしまった時、

カメ(ここにもいました!)にえさをあげている時、

ふとした瞬間にみんなで過ごした教室を思い出します。



自分の大好きな人たちがいる、忘れられない場所だということをです。


1年進級したみなさんは、新しい環境の下で希望に満ちた日々を過ごしていることでしょう。

全く心配はしていません。

優しくて思いやりがあって、楽しいことが好きで頑張り屋なあなた方です。

担任の先生と一緒に歩んで、きっとまた、最高のクラスになることでしょう。



さて、先生はこの春、5年生の担任になりました。クラスの4人はすべて女の子です。

みんなと同じように、元気で優しくて、勉強も運動もがんばるステキな子ども達です。


この小学校には全校で14人の子ども達しかいません。
中学校を会わせてもたったの21人。元4ー4よりも数が少ないぐらいのとても小さい学校です。

村の人口が170人ほどなので、仕方のないことでもあります。

4月に入学してきたたった1人の1年生は、「友達と一緒に勉強がしたい」と言っています。
教室にたくさんの友達がいるというのは、本当に幸せなことなのだと感じます。



でも、でも同じ様にいい所もたくさんあります。

人数が少ない分、一人一人の速さに合わせてじっくり授業を進めることができます。

休み時間になると、芝生の校庭で1年生から6年生までが一緒になって遊びます。

給食は、海の見えるランチルームに全員が集まって食べます。

全員が兄弟のように仲が良い所、家族のように下の名前で呼び合う所もいいなあと思っています。


以前の生活に比べると、ずいぶんと物がなくて不自由な生活だと感じることもあります。

恐らく2年前まで暮らしていたボリビアのサンファンよりも、不便なことがたくさんあります。


ですがその分、生活がシンプルになりました。ゆったりと穏やかに暮らしています。

海の色や空を流れる雲を眺めたり、雨の音や風の歌を聞いたり、明日葉の新芽や昼寝する猫を見つけたり、自然の中にあるものの変化にもっと気付くようになりました。

さらさらと光を放ち昇っていく朝日を見ながら登校し、教室の窓から水平線に沈む夕日を眺める。

そういうのはきっと、すごく“ゆたか”なことなんだと思います。

もちろんあなたの町にだってそういうものはあります。大切なのはそれを見つける心です。


2003年の夏、まだ先生になる前にこの島を訪れた時に言われた一言です。

「この島の先生になって、子ども達にサッカーを教えてくれ」

その言葉に当時は笑って答えていましたが、10年後、その言葉は実現することになりました。

世の中には、不思議な縁が満ちています。



初任者として赴任してから過ごした6年間と1年。
たくさんの出会いと別れがありました。

そういった縁が、いつかまたつながる日が来るでしょう。

また逢いましょう。必ず。それまで元気で。





今日も空は青いですか、、、?

窓からは見上げる空はちょっと雲が多いかもしれないね。
もし雨がぱらついていたとしたら、少し憂鬱な気持ちになるかもしれない。


でも、いつだって空はつながっている。
そういうことを思い出すだけで、また一歩前に進める気がするんだ。


最後に、今まで僕を成長させてくれてありがとう。


                                   









日本に還ってきて1年が過ぎ、今度は小さな島に流れ着きました。

青い青い小さな島で、豊かな自然と温かい人々に囲まれた新生活が始まりました。

10年前に旅して訪れた島に、今度は妻と一緒に。




熱はもうとうに下がりました。

今までは、さよならも言わずに去っていく的なのがウツクシイと思っていたけれど

何が何でも会うってのが、実は大切なのだと

子どもたちからの手紙を改めて読み返して、そう感じた夜でした。


その想いに応えるための答えはやはり一つ。




これからも生きること。

今を生きること。











人生は飛べるか、飛べないか。


今日も呼吸しています。

出会ってきた人々や景色が自分の中に息づいている。

そしてまた一つ別れを告げて、前を向く。



旅をする木 第二章 島生活の始まりです。