20110312

祈り、誇り、そしてエール




 
地球の裏側で記録的な大災害が起きたその時、夜中の2時。

時差-13時間。

ここまでキョリを遠く感じたことはなかった。


初めてそれを知ったのは、集落の子どもが言った”ocho punto nueve”である。
すなわち”8.9”(実際は8.8?)
このニュースは瞬時に地球の裏側の電気ぎりぎりのこの小さな村にまで駆け巡った。
旅先で知り合ったアルゼンチン人の友達達から、安否を気遣うメールが来た。

「まだボリビアにいるか日本にいるか分からないが、あなたとその家族の無事を祈る」

職場の仲間は既に知っていた。世界に衝撃を与えたニュース("mala noticia")。

仲間が"facebook"に、電車を待つ人々の写真をアップしていた。
互いを思いやり、列を尊重し、信念を持ち、ただ待ち続ける姿。
人は病める時、窮地に立たされた時、その真価が問われるとするのなら、
日本人であることに今、誇りを持ちたい。

私たちが誇りに思うべき”日本”の良さは、おそらく経済的な成功や高度な技術なのではないのかもしれない。

今はただ、家族の安否を気遣うと共に、すべての方々のために祈りたい。


病める時、窮地に立たされた時、真価が問われる、本当の愛が問われる。

黄色いTシャツを着ていなくたっていい。今、日本は”愛”に包まれていますか?





活動について少々。地道なシゴトを続けております。


3月11日(金)

朝、7時。奥地の集落への巡回のためにTRUFI(乗り合いタクシー)乗り場へ。
サンファン中心地から30kmの距離にある、comunidad"La Enconada"までは、車さえうまくつかまえられれば約30分の道のり。ただ、30分待ち当たり前、1時間は覚悟しなければならない。

ただそこで、待つ。

運良く訪れたタクシーと交渉して、無事に"La Enconada"(ラ・エンコナーダ)の小学校へ。

今日はその集落の分校である、"3 de junio"(6月3日)と"Los Andes"(ロス・アンデス)の2校へ、複式学級の授業観察へ行った。1週間後には、もう一校の"Guadarquivil"(グラダルキビル)を加えて、授業の成果と課題、複式学級の在り方、日本の実践についての研修会を行う予定になっている。複式学級については門外漢だが、調べれば調べるほど身に染みるのは、日本の教育はやはり継承文化であるということ。先達の先生方の実践と研究の積み重ね。決して錬金術などはない。



はい、これも要請外で対象校外、PROMECA外の活動です。が、現地の校長先生を始め先生方が切に望んでいること。そして、教育技術の支援という意味では、通常学級の先生方にも参考となる示唆を多く含んでいることもあり、喜んで引き受けました。実際ここだけの話、カウンターパート(現地人の仕事上のパートナー)を通さない方が計画も活動もスムーズにいくことがよくあるのです。


以下、授業観察記録。
基本的にいい点のみを観て、授業後に先生に伝えています。もっとこうやっていれば、、という点はもっとよくするための改善点という趣旨で伝えています。最近は、困っていることを先に聞いて、それにアドバイスするというかたちもとっています。(オールスペイン語で、、animo Yotaro)


(〇…良かった点、△ …改善できる点、?…疑問点、→…考察・改善点)

【 3 de junio"(6月3日) 】

< 3~4年生、体育「バスケットボール」…ドリブルの基礎 >
〇規律が全体に行き届いている。挨拶、爪のチェック等、生活指導も素晴らしい。
〇指示が具体的。"distancia de un cuadro"(1マス分開ける)等。児童への声かけも積極的でいい。
△練習開始までの流れはいいが、練習に入ったとたん流れが滞る。待ち時間が長い。練習メニューを行き当たりばったり感で組み立てている。発展性、継続性を持たせる。
△ボールが2つしかないのに、ドリブルの基礎練習は難しい。一人ひとりやるのではなく、遊びの中でその動きの感覚をつかめるようにしたい。
△炎天下で1時間ぶっ通しの運動はきつい。集中力を持続させるために間に給水(休憩)をはさむなどの工夫が欲しい。その際には、水の摂り方や時間等を事前に指導することを忘れずに。

→先生はマテリアの不足(ボールが2つしかないこと)を指摘していたが、それをどう工夫し補うかが教師の腕の見せ所だろう。一人ずつ技能の練習をさせ、その間に皆が待っているのはもったいない。少ないボールで、全員が動けるような活動・ゲームを工夫する。または、持っている子はボールを持って来させる。その際には、学習のために、自分で管理を徹底。
→授業を計画する際に、教師には児童の「発達段階」の概念が乏しいように思う。児童の実態を鑑みて、どのような活動が効果的か想像することができていないということである。2~3年生の子に対して、バスケットボールを大人用のゴールに入れろ、と指示するのは現実的ではない。実際、届かない、上にすら投げられない。もっとスモールステップで。
→待ち時間が長ければ長いほど、児童の集中力が切れるのも早い。少年スポーツ指導にも言えることだが、量より質が重要。

< 0~2年生、理科「人体の名称」 >
〇実物大の人の身体の絵を描きそれを使って身体の名称を説明。児童から出てきた名称をカードに書き、図に張り付けていく。視覚に訴えわかりやすい。
△発言、離席、離室についてのルールが徹底していない。授業として成立していない。難しい。
〇英語の「サイモン・セズ~」みたいに、身体の各所を触らせていく遊びは良かった。授業の最後であったが一番集中していた。こういった遊びを多く取り入れていきたい。
△授業中の飲食は禁止すべき。かばんの置き場も指示する。椅子の背にかけるのがいいか。

→低学年についてはまず、共同生活のルール、そして学習のルールを教えるところから始めたい。聞く姿勢ができてから話す、を徹底する。
→ボリビアの教育では"inicio"として位置付けている、いわゆる幼稚園の段階の子に対しても、高学年とほぼ同様の授業スタイルで望んでいる。むしろそうでなければいけない、と言わんばかりに。今まで見てきた公立校、ほぼすべてでは、そういったかたちで授業が成立していないことがあった。まずは、発想の転換。静かに座って、作業をして、、というのではなく、遊びの中から学びを発見するような。もっと”遊び”の要素を取り入れたい。先生たちも、「教えなきゃ」ではなく、もっと楽に構えていい。



少しずつ、はしょります。

<5年生、算数「割り算の筆算」>
〇落ち着いて練習問題に取り組む。よい見本となっている。
?最終的にはこのような学習態度が身に着くのであるのなら、今の在り方もいい?
→個別学習に陥りがち。個人のスキルを高めるだけでなく、互いに交流したり教え合ったりするような学びがほしい。


授業後の休み時間、バスケをして遊ぶ。パスを教えたらちゃんと試合で生かしていた。教えればできんじゃん。ならやりましょう。でも、やっぱりゴールには届かない、、



【 "Los Andes"(ロス・アンデス) 】

<0年生、国語「アルファベット」…"A","a"の綴り / 2年生、宗教「神のお告げ」>
△0年生の子は、単純作業に完全に飽きていた。一番小さいマスに書かせていた。書き順、かたちが曖昧なので、字のかたちがとれていない子もいたので、指導の工夫が必要。
〇2年生の子たちは対照的に非常に集中して作業に取り組んでいた。
△考える授業ではなく、単純作業に陥りがち。
△授業中の飲食、離席、離室が多い。
?宗教の学習内容について。何を学習させているのか判らないことが多い。

→規律を身に付けさせることもそうだが、魅力的な授業によって教室にひきつけたい。そして、時間通りに終わらせるなど、集中力のオンとオフの切り替えもはっきりさせていきたい。
→筆記体へと発展させるのなら、書き順の指導は必要なのでは。「日本人はローマ字のかたちがみな同じでヘン」と言われたことがあるが、特に初期指導においてはかたちや書き順を教えるのは不可欠ではないか。基本を学んだ上で応用がある、個性がある。それぞれが適当に練習して習得したものを個性とは呼べない。要は、いかに効率よく効果的に学習するかである。
→個別指導の重要性。この年代の子は特に、「見てもらいたい」「ほめてもらいたい」願望が強い。こまめに巡回指導しながら、励ましていきたい。具体的な声かけの指導。


<3~5年生、図工「父の日のプレゼント」…ネクタイ作り>
〇ウレタン(以外と高いのでは??)の素材を使って、みんな楽しそうに作品作りを行っていた。
△アイデアが似通っていた(デザインがみんな同じ斜め)だったので、色んな可能性を提示し幅を広げてあげたい。内容的には、0~1年生ぐらいの作業。

→ずっと悩んでいた子に「縦はどう?」と薦めてみたら、自分でさらに工夫していた。豊かな発想を評価する授業を。上手に作るのが目的か、自分なりの工夫と気持ちをこめて作るのが目的かはっきりさせたい。


休み時間バレーボールをして遊ぶ。人数が少ないだけあって、みんな中がいい。男女で遊べるのがこの競技のいいところ。



と、いうように、毎回地味に記録を取り、先生たちへの研修用の資料へとまとめています。具体物や実践などを通して、より実感的に理解してもらおうと、工夫しています。

来週の水曜日には、これらの実践のよいところを多大に褒めながら、改善点について全体に「こういうのもいいですよー」と提案するようなかたちで、研修を進めていきたいと思っています。資料作りは、今週末が勝負かなぁ、、もう一つの奥の奥にある分校にも行けるというので楽しみです。

もう一つ奥の集落の学校では、実際に算数の指導案を立てて(スペイン語で)日本のスタイルで授業をして(スペイン語で)検討会をするという企画があります。こちらは、より実践的なので楽しみです。へたはうてません。相手のニーズに応える。これが基本姿勢です。



というように、思い出は鮮やかに、活動は地味にやっております。

地震の話を聞いた時、自分にできることを考えましたが、やっぱり今与えられたこの場所で、やれることをやれるだけやり通すしかないな、という思いにいたるわけです。

長くなりましたが、これが日本にみんなに向けたエールです。


「オレ、前見てがんばってんぞー みんなも、前見てがんばれよー!」

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