20110606

七月の桜


サマイパタの市制記念日でのデスフィーレ(行進)の一幕。
    先日、新聞の一面を飾ったサンタクルス市長ルーベン氏の姿も。



先週末、訪れたサマイパタ。
同じサンタクルス県にあり、市内から乗り合いタクシーで2時間半。
サンタクルスからはサンファンよりも近い距離にありながら、景色も気候もがらっと変わる。

バジェ(谷)地方特有の、湿気のないからっとした気候は、この地が避暑地と呼ばれる所以。
山の斜面にぽつぽつと立ち並ぶ別荘。サンタクルスの富裕層にとって一種のステータスシンボルとなっているようだ。

また、外国人移住者の数も多く、イギリス、フランス、ドイツ、ノルウェー等々、非常に国際色が豊かだ。以前バジェグランデで出会ったホセ・ルイス(親切なラモス)も、この町に「カーサ・デル・アミーゴ(友達の家)」という名の宿屋を経営している。

ここは本当にボリビアかと見紛うほど、街並みやカフェにも洗練された空気が漂う。
レストランは雰囲気も味も一級品。ちがうのは値段が安いということだけ。
季節は冬だというのに、色鮮やかな花が町を彩っている。
太陽の傾きで刻一刻と姿を変える山並みが美しい。
今回は訪れることができなかったが、世界遺産「エル・フエルテ」もこの町の魅力として付け足さねばならない。

基本的にはのどかな山間の町。
そこに、この地に惚れた人達が移り住み、少しずつ町をかたちづくっていった。


町を愛してきた者たちの中の一人に、ウエマセツオさんがいる。

写真のバックミラーで見切れているのがウエマさんである。
今回、初めてお世話になったのだが、歴代の協力隊がみな訪れお世話になっているボリビアのお父さん的存在であるウエマさん。

そして、行進途中の町の有力者たちがこぞって挨拶にくる、町の名士としての顔ももっている。
市制記念日のイベントにおいてもその力は発揮されていた。彼の一言(一押し)でプログラムが変えることができる。すごい。

でも本当にすごいのは、そんなすごさを感じさせないこと。もう本当に家族のような、そんな温かさと自然さをもって我々を迎えてくれたこと。全く人に気を遣わせることなく、むしろ自分も楽しんでいるような、そんな懐の深さで僕らを包んでくれていること。

そんなウエマさんが海外移住を決意したのは高校生の頃。アルゼンチンに移住していたおじさんの一言。

「地平線から太陽が昇り、地平線に太陽が沈む」

この殺し文句(?)に魅せられて、ウエマ青年は遠く太平洋を越え、地球の裏側まで夢を現実のものとするためにやってきた。サンファン出身の奥さまと出逢い、サマイパタに居を構える。
言葉少なに語っていたが、他の移住者の方々同様、想像を絶する苦労があったはずだ。

でも、それを感じさせない。それが一番すごい。

遠く異国に移り住み、その地で生活し、町の人々に尊敬される。
もともとあった仕事を奪うのではなく、新しく産業を起こし(または新しい技術を伝え)結果、その地をより豊かにするのであるから、これは究極の国際協力と言える。
2年間やそこらではなく、一生をかけてその国の発展に寄与するのであるから。

サンファンを始め、ボリビアにおいて日本人がある種の敬意をもって見られているのは、こうした前駆者たちの”覚悟”と”努力”があったからだ。

この国は、この町には、そういう日本人が住んでいる。

僕らはそれを、忘れてはいけない。



ウエマさんの家の庭には一本の桜の木がある。

毎年、七月頃になると桃色の花を咲かせるそうだ。

まさか、ボリビアで花見ができるとは。。

「自粛」「不謹慎」についての考察はまた後ほどするとして、

今は、ボリビアに根付いた日本人の魂。

それがささやかながら厳かに、満開の桜となって咲き誇るのだなと、桜見に想いを馳せる。


例えサマイパタから日本人ボランティアがいなくなっても

例ボリビアから日本人ボランティアがいなくなっても

ウエマさんの桜はこの地で咲き続けるだろう。


サマイパタでの任期をもう時期終える二人の先輩隊員。
町を歩くと、たくさんの人から声をかけらている。それが2年間の活動の何よりの評価だと思う。

「いい町だなー」ということは100%真実だ。でもその時、自分にとっての住みたい町はサンファンだなと改めて感じた。

だって、サンファンには待っててくれる人たちがいる。自分を必要としてくれる人たちがいる。

町を歩くと、「プロフェ!」「ヨターロ!(スペイン語アクセントで)」と声をかけてくれる人たちがいる。
そういう人たちのために働きたい。移住者の覚悟の比ではないが、今はささやかながらそう思う。

自分の町サンファンで生き、サマイパタで生きる日本人にまた逢いに行く。

桜の木のように、当たり前にそこにあって僕らをいつも見守ってくれるような、そんな存在。
そんなウエマさんの下に、仲間たちも再び集うことだろう。


また逢おう。

七月の桜の木の下で。

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