20110405

永訣の空





Kさん


僕がきみと始めて言葉を交わしたのは、KTCへと向かうバスの中だったね。
2010年4月7日水曜日。あの時は小雨が降っていたっけ。

第一印象で覚えていたこと。

きみの向かう国のこと。幼稚園で働いていたということ。そして、強い意志を秘めた眼差し。

その後、同じ班のメンバーとなり、きみの意志が本物だってことがよく分かった。
はにかむような柔らかな笑顔と穏やかな言葉の奥に秘めた志。
きみなら、きっと理想の幼稚園を作ることができる。
いや、理想を託せるならこういう人だな。そう思わせる何かがあった。

僕は、本気で市長にだってなれるって思ってたよ。


「死んだらいい人」って言葉はウソだと思う。


だって、きみは始めて言葉を交わした瞬間から、尊敬すべき仲間であり、みなに愛される存在だったからだ。

誰よりも机に向かっていた時間は長かったんじゃないかな。
でも、みんなで集まる時には必ず、きみの笑顔がそこにあった。
バレーボールの奇跡の優勝も、きみのトスのおかげだ。
サーブがやさしくてジェントルマンだったこと。
でも本気を出したら強烈なスパイクを決めてたよね。
そういうきみの性格、、らしいなぁ。
文化祭。みんなで女装して、オオケガしたのだって今となってはいい思い出だ、、笑

毎晩の長い点呼、と称した他愛もないおしゃべり。


毎日顔を合わせて、もう家族みたいな感じだった。

勝手にそう思っていた。だから、こんなに早くお別れが来るなんて思っていなかったんだ。




あれが最後の点呼になるなんて思っていなかった。

今という時を大切に、なんて言葉。いつだって失ってから気付くんだ。遅すぎるよ。



きみからもらった言葉を、そのままきみに返したい。


「あなたに出会えたことが 僕の財産です。 本当にありがとうございました。

 あなたの国の人たちは あなたに出会えて、絶対に幸せだと思います。

 もう一度、ありがとうを言わせて下さい。本当にありがとうございました。」



こんな言葉をもらっていたんだなんて改めて気付いて、心底泣けてきた。
もちろん自分のやってきたことに自信はある。いつだって真剣だ。
でも、まだ、そんな言葉をかけてもらえるような、大層な人間じゃないよ。



「班長みたいな園長をめざします」



でも、だから、

きみのその言葉。背負わせてもらっていいですか?


「あなたみたいな先生をめざします」


穏やかな笑顔の奥に秘めた、あつい志。
言葉少なく、そして努力を重ねる不言実行の姿勢。
そして何よりも、人と人との絆を大切するKさん。


子どもたちが豊かな心を育んでいけるような、そんな学校を作りたい。
校長なんてなりたいとは全然思わなかったけど、理想の学校を作れるのなら、それも悪くないと今なら思える。
自分はまだ何もなしてはいないのだけれど、きみの志を背負いたい。

その覚悟はあります。

僕はよく感情に流されたり、つい言葉が過ぎるところがある。サーブだってガチで撃って女子を泣かせてしまうことだってさ、、反省。まだまだ見習いたいところはたくさんある。

だからきみの想いを背負わせてください。




最後に、

みんなからもらったメッセージカードの中で、きみのだけがちがっていたんだ。

その時は慌ててたのかな、ぐらいにしか思っていなかったけど。

それは、多分何かのサインだったのだと思う。

僕たちは世の中に溢れるそういう予兆にもっと気付くべきだし、やはり今ともっと真剣に向き合うべきだと思うんだ。


今僕の住む町では、夜空に南十字星が輝いている。

空を眺める度に思い出す。



僕らは絶対に忘れない。



だからきみはずっと生き続ける。

僕らの中でずっと生き続ける。



最後にもう一度だけ言わせてください。





本当にありがとう。



22年度1次隊 駒ヶ根訓練所 4班班長 中野陽太郎






きみの言葉を一つ一つ噛みしめています。おそらくみんながそうあるように、自分自身もまた、言葉にできない悲しみに想いを綴ることができずにいる。

でも何よりも、知らせてくれてありがとう。知ることができてうれしい。悲しいけど、うれしい。

家族の方や仲間たちにどんな言葉をかければいいのか。己の言葉の無力さを痛感する。
国代表の方。全体に送るメールをどんな想いで綴り、そして送信ボタンを押したか。
ただただ、感謝の言葉を述べるだけです。そして、遺族の皆様へのご配慮にも感謝いたします。

もしこの言葉が彼の元に届くのであれば最高の幸せです。そして、同じ任国のみなさん、特によき隣人であり4班の班員でもあったK丸くん。4班の代表として、しっかり彼を見送ってあげてください。班長、いや監督命令です。どうか、よろしく頼みます。



死んだように生きるのではない。

今を生きるのである。

過去と向き合えない人間は、今を生きることはできない。

今を生きる人間は、自分の未来と向き合うことができる。

だから前を向こう。過去は変わらない。

今できることは、顔を上げて、前を見て、立ち上がること。

一歩踏み出すこと。

おおげさかもしれないが、生きる。

今をより愉しく、美しく。



Kさんのお別れに臨んで、安らかなご冥福を心よりお祈りいたします。

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